JICUF代表ポール・ヘイスティングスがUNHCRの年次会合で言語教育に関するセッションを主催
- Aki Takada
- 7月23日
- 読了時間: 5分

JICUF代表のポール・ヘイスティングスは、6月24日から27日までスイス・ジュネーブで開催された国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の年次会合、Consultations on Resettlement and Complementary Pathways (CRCP) (第三国定住と補完的受入に関する国際会議)に出席しました。CRCPは、UNHCR、各国政府、民間企業、学術機関、NGO、難民の代表が、難民問題の恒久的解決策を協議する最も重要な多国間フォーラムです。
今年のCRCPに向け、JICUFは難民の社会統合に不可欠な「言語教育」に関するセッションを提案しました。この提案が採択され、ヘイスティングス代表が以下のパネリストによるディスカッションをファシリテートしました。
篠崎まどか氏(出入国在留管理庁)
エドワード・フー氏(Duolingo)
イブラヒム・ソラニ氏(スロベニア在住の難民学生)
レベッカ・グラナート氏(バード大学)
このセッションでは、言語教育が難民の社会統合を促進するだけでなく、雇用機会を広げ、アイデンティティを育み、メンタルヘルスを支えるという点が強調されました。議論は英語圏および非英語圏の両方に焦点をあて、日本とスロベニアの事例が取り上げられました。教育や就労のために新たな言語を学ぶ際に難民が直面する制度上の問題点や、教育的・社会心理的な課題が議論されました。
以下は、CRCPのRefugee Advisory Group(難民諮問グループ)のメンバーで、早稲田大学博士課程に在籍するスーザン・フセイニ氏による報告に基づくセッションの要約です。

篠崎氏はまず、日本に難民を受け入れるための複数の経路と、言語教育の位置づけについて紹介しました。たとえば、政府主導の第三国定住では、出発前に語学研修を実施し、到着後には572時間の日本語教育が施されます。また、JICUFのパートナー団体であるパスウェイズ・ジャパンが運営する日本語学校プログラムでは、パートタイム就労と併せて2年間の日本語教育が実施されています。
篠崎氏は、各受け入れプログラムにおいて言語教育が長期的統合のための不可欠な手段として組み込まれていることを示す一方で、第三国定住の出発前の語学教育が10〜14日間と短期間であることや、高年齢層の学習者が日本語習得に苦労することなどの課題も指摘しました。また、雇用主が言語教育に関与することの重要性や、ICTツールを活用した自主学習の可能性にも触れ、日本が多層的かつ持続可能な言語教育支援システムの構築を目指していることを強調しました。
シリア出身の学生イブラヒム・ソラニ氏は、シリアからトルコ、ドイツ、スロベニアへと移動した自身の経験について語りました。彼は、言語が単なるコミュニケーションの手段ではなく、人のアイデンティティを再構築し、尊厳を取り戻すための手段であると述べました。自身が複数の言語を独学で習得してきた経験から、避難中に新たな言語を学ぶことが、特にすでに大人になった人にとってどれほど精神的に困難であるかを共有しました。ソラニ氏は、学習者の背景全体を捉え、トラウマに配慮し、動機づけに重点を置く教育アプローチの重要性を強調しました。
Duolingoのエドワード・フー氏は、データに基づくグローバルな視点から、同社がどのように英語学習の民主化を推進しているかを紹介しました。現在、Duolingoの利用者の90%が無料で学習しており、難民や避難民に対しては英語試験の受験料を1,000万ドル以上免除してきたそうです。
フー氏はまた、英語が世界中で雇用への扉を開く鍵であると述べ、従来の試験が高額でアクセスが困難であり、柔軟性にも欠けると批判しました。特に、従来の試験は「受ける側の視点」で設計されておらず、難民が教育を受け、就労するための要件が共感性に欠けると指摘しました。その上で、Duolingoのような垣根の低いテクノロジーを難民キャンプの教育とエリート教育の両方に取り入れることを提案し、教育の公平性を実現する可能性を示しました。
バード大学のレベッカ・グラナート氏は、バングラデシュとケニアにおける「Hubs for Connected Learning」について紹介しました。これはバード大学とBRAC大学がオープン・ソサエティ大学ネットワーク(OSUN)の一環として運営する、学習者中心でテクノロジーを活用したブリッジプログラム(大学入学準備プログラム)です。難民キャンプにおいて、中等教育を終えた学生が大学教育を受ける準備を行い、教員を養成しています。このプログラムはケニア、ヨルダン、バングラデシュで実施されており、グラナート氏は、言語教育における遊びやストーリーテリングなどの教育手法の重要性を強調しました。

セッションのキーポイント:
アイデンティティとコミュニティへの帰属意識:言語習得は難民に安心感をもたらし、社会への統合を促進する。
高年齢学習者への特別支援の必要性:30歳以上の成人は言語習得が難しく、夜間授業や家族に配慮したモデルが必要。
テクノロジーの活用:Duolingoのようなオンラインプラットフォームは、自由に移動できず、インフラが整備されていない環境にいる難民にも利用が可能。
言語教育の文脈化:言語教育は、文化的・社会的・職業的背景を考慮してカスタマイズすることが重要。
メンタルヘルスと動機づけ:学習者のエンパワーメントや自信を育むことは、技術的指導と同等に重要。
試験制度の改革:IELTS、TOEFL、日本語能力試験(JLPT)など従来の試験制度はコストが高く、柔軟性に欠け、アクセスが困難であり、代替策の開発が必要。
ヘイスティングスJICUF代表のコメント:
「CRCPは、JICUFが日本および世界において難民のための教育パスウェイズの拡大に取り組んでいることを発信する絶好の機会でした。JICUFとICUはこれまでもマルチリンガリズムの重要性を強調してきましたが、今回ジュネーブでこのテーマに関するセッションの企画・進行を担当できたことを大変光栄に思います。」




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