JICUFがパヤップ大学で難民教育に関する会議を共催
- Aki Takada
- 6月24日
- 読了時間: 5分

6月12日と13日、JICUFはタイ・チェンマイのパヤップ大学で「教育パスウェイズのためのグローバル・タスクフォース」 実践者会議を共催しました。会議を共に企画したのは、国際高等教育研究所(IIE)、カナダ政府(移民・難民・市民権省:IRCC)、Refugee Education Australia、パスウェイズ・ジャパン、パヤップ大学でした。テーマは「ビルマ難民・避難民のための高等教育の準備」で、オーストラリア、カナダ、ドイツ、アイルランド、日本、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、韓国、タイ、アメリカから政府機関、NGO、UNHCR、高等教育機関、学生の代表者約70名が参加しました。タイトルが示す通り、会議の主な目的は、ビルマから避難を余儀なくされた若者たちが、尊厳と平和を持って生活を再建できるように恒久的解決策を模索することでした。タイ・ミャンマー国境の長期化した難民危機は、国際的な注目がウクライナやパレスチナなどの新たな紛争に移る中、「忘れられた地獄」とも表されています。
初日の冒頭、UNHCRアジア太平洋地域事務所の上級保護官ジュリア・ザイコウスキー氏が、地域の最新の難民状況について解説しました。UNHCRが保護するアジア太平洋地域の総人口は2024年末に1,730万人に達し、2015年比で76%の増加となりました。特にアフガニスタンとミャンマーの二つの難民危機が顕著であり、ミャンマーでは510万人が強制的に移動させられ、そのうち360万人が国内避難民、150万人が国外難民や庇護申請者です。タイには約70万人のビルマ人が滞在しており、そのうち60万人は無国籍とされています。

国境地域に住むビルマの若者たちが高等教育を受けるためには、さまざまな障壁があります。第一に、ほとんどの若者がタイ国内で法的地位を有していません。パスポートがなければ海外に渡航することはできず、ミャンマーに戻ってパスポートを取得することは大きなリスクを伴います。第二に、多くの若者が63校ある「移民学習センター(Migrant Learning Centers: MLC)」で教育を受けていますが、これらの学校はタイ、ミャンマーいずれの政府からも認可されておらず、卒業しても、高校卒業資格があるとは公式に認められません。そのため、多くの優秀な学生はGeneral Education Development(GED、アメリカで高校卒業と同等の学力を持つことを証明する試験)プログラムに進みますが、GEDを認定していない国もあり、加えて米国の大学進学の道は現政権下でほぼ閉ざされており、選択肢は限られています。第三に、資金不足の問題があります。たとえ大学に合格しても、奨学金なしでは多くの学生が入学できません。
次のセッションでは、現在オーストラリア、フィリピン、日本で提供されている難民学生向けの高等教育プログラムが紹介されました。こうした取り組みは賞賛されるべきものの、各プログラムの受け入れ人数は二桁にとどまり、まさに「焼け石に水」の状態です。その後、第三国における教育の機会に関する情報を難民学生に拡散する方法や、入学準備のための支援についてのパネルディスカッションが行われました。現行の準備プログラムと、オーストラリア、カナダ、アイルランド、日本、フィリピンなどの大学入学要件との間に存在するギャップを埋めることは大きな課題です。

会議の会場であったパヤップ大学は、個別のMLCとの間で覚書(MOU)を交わし、MLCの卒業証明書を認める決定をした経緯を共有しました。授業料の40%を免除し、残りは寄付によって賄われているそうです。こうしたタイの大学の柔軟な対応は、他国の高等教育機関の模範となりえます。
2日目には、参加者が2グループに分かれて、NGOのビーム教育財団(Beam Education Foundation)とチェンマイ大学を訪問し、両機関がビルマ難民をどのように支援しているかを学びました。2010年設立のビーム財団は、義務教育から職業訓練、高等教育奨学金まで幅広く提供しており、これまでに数千人の学生を支援してきました。チェンマイ大学もパヤップ大学と同様にビルマの学生を受け入れ、奨学金を支給しています。
その後、パヤップ大学とチェンマイ大学で学ぶビルマの学生たちが、自身の大学出願の経験と、入学後の生活について語りました。GEDプログラムではカバーされない教科もあり、授業についていくのが大変だったという声もありました。彼らは、GEDが大学進学のためのツールとして不十分であること、費用が高いこと、そしてその内容がアメリカ中心でビルマの学生には馴染みがないことを訴え、自分たちの状況により適した進学ルートの構築を求めました。

最終セッションでは、小グループに分かれてアクションプランの作成に取り組みました。会議の共催者たちは、今後オンラインでフォローアップミーティングを開催し、参加者にこれらのアクションプランをどのように活用しているかを共有してもらう予定です。
会議の最後には、IRCCのタイラー・アレル氏が心を打つスピーチを行い、「かつては不可能と思われていた取り組みを、皆さんが実現している」と述べ、「より多くの人々がこの活動に加わるよう、声高に叫んでほしい」と呼びかけました。そして、「決してあきらめず、ノーを受け入れない姿勢を持ち続けよう」と励ましました。
JICUFにとっても、このような困難な時期に米国、オーストラリア、カナダ、タイ、日本の仲間と共に対面での会議を共催できたことは、非常に意義深いものでした。世界各地での難民支援活動が、米国の政策転換に伴う予算削減で大きな影響を受ける中、参加者は仲間意識と連帯感を新たにし、前進するためのエネルギーを得ることができました。

Comentários