Consultations on Resettlement and Complementary Pathways (CRCP)は、国際連合難民高等弁務官事務所 (UNHCR) が毎年開催する、難民に関するもっとも重要な多国間会議です。CRCPでは、世界中の政府、財界、学術界、NGO、難民代表などが一堂に会し、難民の第三国への定住について議論します。今年は6月5日から7日までスイス・ジュネーブで開催され、JICUF副代表の髙田亜樹が日本代表団の一員として参加しました。参加資格を有するのは難民の第三国定住に関与する組織のみであり、JICUFはICUその他の教育機関に難民学生を受け入れた実績をもとに、参加を認められました。日本からの他の参加者には、出入国在留管理庁や官房の職員、NPOパスウェイズ・ジャパンやウェルカム・ジャパンのスタッフ、そして難民代表がいました。
今年の会議には44カ国から350人の代表が参加し、難民の再定住に関する多様なテーマについて討議しました。取り上げられたテーマには、第一次庇護国と第三国間の連携、トラウマへの対処法、気候変動による強制移動、難民に関する負のイメージの払拭、LGBTQIA+の難民の保護などがありました。
UNHCR は会議中に、2025年には290万人の難民が第三国定住を必要とするであろうと予測する声明を発表しました。第三国定住とは、最初に難民が逃れた国(第一次庇護国)から、第三国に難民を移住させ、永住権を与えることを指します。前年には 9万6,000人の難民が再定住の対象となりましたが、これは再定住を要する人の5%にも値しません。
このように、政府による取り組みだけでは、再定住を必要とするすべての人を受け入れることができないため、企業による雇用や、大学への留学などを通じて難民を安全に第三国に受け入れる、社会全体による取り組み(”Whole of society approach”)の重要性が近年叫ばれています。これらの取り組みは「補完的受け入れ」(Complementary Pathways)と呼ばれています。UNHCRの「難民の第三国による受け入れ:2030年ロードマップ」(2030 Roadmap on Third Country Solutions)は、補完的受け入れの目標人数を設定していますが、2019年の12万人から毎年2万人ずつ増やし、2028年には年間30万人の受け入れを目指しています。教育の機会を通じて難民を第三国に受け入れること(「教育パスウェイズ」)は、補完的受け入れの一つの柱であり、2010年から2022年までの補完的受け入れの19%を占めています。(出典)
ICUにおけるシリア人学生イニシアチブ(SSI)や日本・ウクライナ大学パスウェイズ(JUUP)の実施を経て、JICUFは難民学生を大学に受け入れた経験を広く共有し、より多くの高等教育機関やNGOに対して「教育パスウェイズ」のアドボカシーを行うことに力を入れるようになりました。2023年のグローバル難民フォーラムでは、パスウェイズ・ジャパンと共同で、日本およびアジア太平洋地域での教育パスウェイズの拡大に貢献することを宣言(プレッジ)しました。第三国教育パスウェイズに関するグローバルタスクフォースの一員でもあるJICUFにとって、CRCPで世界中の組織や専門家と交流し、ベストプラクティスを共有したり、協力の機会を模索できたことは有意義でした。特に、フィリピンやニュージーランドの政府関係者と補完的受け入れを促進するためにいかに政府の協力を得るかについて意見交換できたことや、国際NGO・Talent Beyond Boundariesと教育と就労の密接な関係や、協働の可能性について話し合えたことは有益でした。さらに、World University Service of Canada (WUSC)や国際カトリック移住委員会(ICMC)など、教育パスウェイズの実施経験のある他国の組織から学ぶことも多くありました。
6月20日の世界難民の日に、UNHCRは2023年の新しい難民統計を発表します。フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は会議中、新しい数字は残念ながら良いものではないと述べました。毎年、より多くの人々が故郷を離れることを余儀なくされていますが、JICUFは問題の解決に微力ながらも貢献し続けたいと考えています。この分野における取り組みは、人類に貢献するグローバル市民の育成というJICUFの使命のみならず、ICUの世界人権宣言へコミットメントに沿うものだからです。
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