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JICUFがウィルフリッド・ローリエ大学と難民の高等教育に関するイベントを共催

  • 執筆者の写真: Aki Takada
    Aki Takada
  • 5月19日
  • 読了時間: 6分

4月下旬、JICUFは、カナダのウィルフリッド・ローリエ大学および公益財団法人パスウェイズ・ジャパンと一連のイベントを共催しました。これらの組織は、紛争により祖国を後にしたを学生たちに対して高等教育の機会を拡大するという共通の目標を持っています。

「ビルマおよびロヒンギャ難民のための教育パスウェイズに関する円卓会議」(東京大学・伊藤国際学術研究センター)

<左端から4人目より>キム・チョンヒョン氏(忠南大学)、加瀬貴氏(シャンティ国際ボランティア会)、根本敬氏(上智大学)、折居徳正氏(パスウェイズ・ジャパン)(スザン・フセイニ撮影)
<左端から4人目より>キム・チョンヒョン氏(忠南大学)、加瀬貴氏(シャンティ国際ボランティア会)、根本敬氏(上智大学)、折居徳正氏(パスウェイズ・ジャパン)(スザン・フセイニ撮影)

まず4月24日(木)には、東京大学にて「ビルマおよびロヒンギャ難民のための教育パスウェイズに関する円卓会議」が開催されました。ミャンマーにおける難民問題に強い関心を持つ実務者および学生を対象とした非公開の会議で、大学、非営利団体、国際機関、企業などから40名以上が参加し、タイ・ミャンマー国境地帯のビルマ難民、およびバングラデシュのロヒンギャ難民の最新の状況について学びました。

ICUの卒業生であり、長年ICUでも教鞭を執った上智大学名誉教授の根本敬氏が、ミャンマーにおける政治的・社会的・人道的状況について概説しました。また、UNHCRバングラデシュ事務所の職員や、タイ・ミャンマー国境地域で活動する日本のNPO「シャンティ国際ボランティア会(SVA)」の加瀬貴氏からの現地報告もありました。

さらに、ICU教養学部3年生のマラン・ノー・カォンさんが、ミャンマーの国内避難民キャンプからICUに留学するに至った驚くべき体験について語り、参加者に強い感銘を与えました。難民向け教育センターの過密状況、教育施設の未認可ステータス、教員や教材の不足、生徒の法的書類の欠如といった、難民の若者が高等教育を受けるために克服しなければならない多くの障壁が浮き彫りになりました。加えて、ロヒンギャ難民については、教育におけるジェンダーの不均衡も深刻な問題として指摘されました。

夕方からはレセプションが開催され、参加者たちは引き続き議論を交わし、ミャンマーの状況に対する理解を深めました。ビルマ・ロヒンギャ難民に携わる人々が一堂に会し、ネットワークを広げる貴重な機会となりました。共催者にとっても、ミャンマーにおける難民の教育機会拡充を検討する中で、この日は特に意義深いものとなりました。会場のご提供と運営のご協力をいただいた東京大学国際戦略課の皆様に心より感謝申し上げます。

「高等教育を通じて紛争地域の学生を支援するカナダの取り組みーウィルフリッド・ローリエ大学「International Students Overcoming War(ISOW)」チームによる発表(国際基督教大学) 

ISOW副代表兼学生サポートディレクターのジャロン・ボウマン氏(後藤夕撮影)
ISOW副代表兼学生サポートディレクターのジャロン・ボウマン氏(後藤夕撮影)
小グループディスカッション(後藤夕撮影)
小グループディスカッション(後藤夕撮影)

ウィルフリッド・ローリエ大学の「International Students Overcoming War (ISOW)」イニシアチブの教員アドバイザーであるギャビン・ブロケット教授は、2名のプログラムアシスタントと8名の学生メンバーを引き連れて来日しました。学生が主導し、資金調達するこのイニシアチブは2014年に始まり、これまでに9か国から43名の難民学生を支援してきました。学生たちは、奨学生の選考から受け入れ後の支援、政府への働きかけ、広報、資金管理に至るまで、奨学金の運営全体を担っています。

同大学では、学生投票により、全学生が毎学期小額の負担金を納める決定がおこなわれ(現在は8カナダドル)、難民学生の奨学金の50%をこの負担金で賄っています。この取り組みは、難民学生を支援するばかりでなく、学生幹部にリーダーシップの機会やスキル習得の場を提供することで、多くの学生に恩恵を与えています。

4月25日、ICUにて開催されたイベントでは、ISOWの学生8名が約60名の聴衆を前に、それぞれのチーム内での役割を交代で紹介しました。参加者にはICUの学生に加え、上智大学、早稲田大学、慶應義塾大学、さらには韓国の忠南(チュンナム)国立大学(CNU)からの学生もいました。CNUのキム・チョンヒョン助教授は、4名の学生を引率してこのイベントに参加しました。

プレゼンテーションの後には大学食堂でレセプションが行われ、ICUの岩切正一郎学長とブロケット教授が歓迎の挨拶を述べました。多様な背景を持つ学生たちは交流を楽しみ、親睦を深めました。金曜日と土曜日のイベントの会場をご提供いただいたICUに心より感謝申し上げます。


学生向けワークショップ「難民学生に高等教育の機会をー教育を受ける権利の実現のために学生主導でできること」(国際基督教大学)

後藤夕撮影
後藤夕撮影

4月26日、ISOWチームは紛争地域の若者のための高等教育の機会拡大をテーマに、学生向けの1日ワークショップを実施しました。25・26両日に開催された2つのイベントは、ISOW、ICU、忠南国立大学(CNU)、上智大学、早稲田大学の7人の学生が構成する企画委員会によって企画・運営されました。

ワークショップは、「なぜ大学は難民学生の教育を支援すべきか」をテーマとするパネルディスカッションで幕を開けました。モデレーターはICU教養学部3年生の岡安花さんが務めました。ブロケット教授、キム教授、そしてパスウェイズ・ジャパンの折居徳正代表理事が、それぞれの国における難民受け入れの歴史的背景を紹介し、JICUF副代表の髙田亜樹とともに、大学が人道的課題に取り組む意義について議論しました。ブロケット教授は、大学を「小さな都市」と表現し、宿泊施設、医療、食事、ビザ業務などの基盤サービスを備え、難民受け入れの課題に対応できる体制が整っていると述べました。そして、大学には社会的責任があり、学生は大学に対してその責任を果たすよう促すべきだと強調しました。折居氏も、大学こそが最適な難民の受け入れ口であると述べました。


ICU student Hana Okayasu moderating a panel discussion (Photo by Yu Goto)
ICU student Hana Okayasu moderating a panel discussion (Photo by Yu Goto)

続いて、ブロケット教授が特別ゲストであるエンリケ・ピニェイロ氏へのインタビューを行いました。ピニェイロ氏は、NGO「Solidaire」の創設者であり、映画監督、パイロット、医師、俳優でもある多才な人道活動家です。Solidaireは自費運営のNGOで、ガザ、ウクライナ、スーダンなどの紛争地域に緊急人道支援を届けるとともに、2機の航空機と地中海に浮かぶ1隻の船を用いて人々の救助活動を行っています。同団体はこれまでに49回のミッションを遂行し、3,000人以上を安全な場所へと移送してきました。ピニェイロ氏は、学生たちに対し「受け入れがたいことを受け入れてはならない」と訴え、「正義とは何かを直感的に知っていた6歳の自分に恥じないように生きて」と呼びかけました。

午後には、参加した約50名の学生たちが小グループに分かれて、三つのインターアクティブ・セッションが実施されました。セッションのテーマは「私たちに何ができるか」、「大学が人道活動を行う意義を訴える」、「アクション・プランの策定」でした。学生たちは、ウィルフリッド・ローリエ大学、忠南国立大学、ICU、上智大学、早稲田大学、東京大学、東京外国語大学、神奈川大学、足利大学から集まり、ミャンマー、シリア、ウクライナ出身の難民の背景を持つ学生もいました。彼らは4時間にわたり、人道的課題に取り組むことの難しさと解決策について議論し、それぞれが取るべき具体的な行動について考えました。 


イベント終了後に参加学生対象に実施したアンケートでは、回答者の100%が、25・26両日のイベントに「非常に満足した」と答え、カナダをはじめ他国の学生の活動について学んで刺激を受け、多様な背景を持つ学生と交流できたことへの喜びを表すコメントもありました。

JICUFは、共通の関心を持つ人々を集め、活発な意見交換を行い、新たな友情を育んだ三つのイベントを開催できたことを嬉しく思います。正義、平等、自由の普遍的価値を促進し、国境や組織の垣根を超えた協働を促す会議を開催することは、JICUFの使命である「グローバル市民の育成」を達成するための重要なツールの一つです。 

 
 
 

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